シームレスパイプとセミシームレスパイプ
『シームレスパイプ』とは継ぎ目のないパイプで、丸棒の中心を押しひろげて中空にした継ぎ目のないパイプです。
『セミシームレスパイプ』とは継ぎ目のあるパイプで、鋼板を円筒状に加工し溶接したあと引抜き加工などをしており、外観では継ぎ目が目立たないパイプです。
1. シームレスパイプ
■ 製造方法
代表的な製造方法はマンネスマン法といい、丸棒形状のビレットを高温に加熱し、外周より圧縮しながらその中心をプラグという工具を押しあててビレットに穴を開けパイプにします。
この製造方法は大量生産に向いています。大口径の対応が可能で、厚肉品の製造にも向いています。
■ 特徴
接合部がありませんので材料本来の性能が出ます。製造方法の点から寸法精度はあまり良くありません。
● 製造工程のイメージ図
2. セミシームレスパイプ
■ 製造方法
材料はビレットではなく鋼帯(コイル材)を使います。電気抵抗接合による電縫鋼管の場合、アンコイラーなどの機械を用いて鋼帯を連続的に引き出し、円筒状にフォーミングしていきます。
接合部に大電流を流して高温状態にし、押しつけて突き合わせ、電気抵抗溶接により溶接接合します。組織が溶融して接合するため溶接材は使いません。接合部のビード(溶接の盛り上がり)は削り取ります。冷却ののち矯正や引抜加工を行ないます。
■ 特徴
比較的小ロット生産向きです。柔軟な寸法設定が可能で寸法精度が良好です。
● 造管工程のイメージ
● 引抜工程のイメージ図
3. 鋼管の使い分け
■ 配管用鋼管
パイプの内側に流体(気体や液体など)を流す目的で使用する鋼管です。
外径はA呼称、肉厚はスケジュール番号で設定されています。スケジュール管と呼ばれるパイプが一般的(例 ガス管や水道管など)。基本的に規格サイズ以外は流通していません。
スケジュール管に対して、径の実寸値(ミリ、インチ)で設定されている鋼管は“パイプ”に対して“チューブ”と呼ばれます(例 油圧配管やエアコンの配管など)。こちらも基本的に規格サイズ以外は流通していません。
■ 構造用鋼管
建築用途と機械部品用途で種類や流通が異なります。建築用途の場合は配管用鋼管のように規格サイズがあります。
機械部品用鋼管は種類が多く流通していますので、それぞれの用途や要求品質に合わせて慎重に選定する必要があります。
4. 鋼管の選定
鋼管を選定する際は、規格サイズの鋼管を選定すると流通量が多いため、業者の選択肢も広がりますので一般的に納期は早く、価格も安価になります。
規格サイズ以外の鋼管が必要な場合、サイズにもよりますが、材料製造ロットが比較的小さく、また寸法の自由度が高いセミシームレスが有利でしょう。